第1章 イスタンブールT 〜都市美あふれる街〜

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§旅のはじまり
§絨毯屋の洗礼



















 魚屋を覗くのは日本でも楽しいものだが、気のせいか、同じサバでも、イスタンブールに並べられると、妙に異国情緒がある。豊富な種類の魚の中には、全身にイボのあるイボカレイなど、あまり馴染みのない魚も見受けられる。鮮度を第一の売り物にする日本の魚屋さんとは趣を異にしている。葉っぱの緑を巧みに使い店主の絵心を感じさせるディスプレイになっている。一軒一軒個性を競い、くわえタバコで客引きの声を上げる彼らの顔は実に味がある。
(p16)
絨毯屋の洗礼
絨毯屋の洗礼
 異国情緒あふれるイスタンブールの露天の魚屋。日本では見かけない魚が多い。
§少女の微笑み











 そうした連中を適当にあしらいながら歩いていると、ある家の窓に吸い寄せられた。そこには、家の中からこちらを眺める少女の姿があった。彼女は、僕が生まれるずっと前から僕を待っていたかのように静かにそこに佇んでいた。思わず、遠い昔、母親に抱かれたとき感じたような、何ともいえぬやすらぎが蘇える。僕は思わず息を呑んでいた。
(p33-34)
少女の微笑み
 イスタンブールの貧しい地区にすむ少女。その無垢な眼差しに、思わず幼いころの想いが蘇った。
§ボスフォラスクルーズ
















 「アナドルカヴァウ」に着くと、高台のヒサール(要塞)を目指す。炎天下、そこまで登るのはかなりきつい。しかし、20分ほどで着いたヒサールから見下ろした黒海は実に素晴らしかった。大小幾隻ものの船が、真っ青な海に白い軌跡をつけながら、ひっきりなしに往来している。黒海からは常に強い風が吹きつけ、海面は波立っている。その白い波を蹴って、観光客が個人的にチャーターしたモーターボートが大きな貨物船の合間を縫って黒海の入り口まで走っていく。黒海は立ち上る水蒸気のためか、けぶっていて遠くまで見通すことはできない。その先に広がる大海原を想像してみると、ビザンチン帝国との通商のために船団を組んだジェノバの船隊が、今にも霞の向こうからゆっくりと現れそうであった。
(p46-47)
ボスフォラスクルーズ
 ボスフォラス海峡の来たの終点、アナドルカヴァウの高台にあるヒサール(要塞)から黒海の入り口を見下ろす。

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