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「アナドルカヴァウ」に着くと、高台のヒサール(要塞)を目指す。炎天下、そこまで登るのはかなりきつい。しかし、20分ほどで着いたヒサールから見下ろした黒海は実に素晴らしかった。大小幾隻ものの船が、真っ青な海に白い軌跡をつけながら、ひっきりなしに往来している。黒海からは常に強い風が吹きつけ、海面は波立っている。その白い波を蹴って、観光客が個人的にチャーターしたモーターボートが大きな貨物船の合間を縫って黒海の入り口まで走っていく。黒海は立ち上る水蒸気のためか、けぶっていて遠くまで見通すことはできない。その先に広がる大海原を想像してみると、ビザンチン帝国との通商のために船団を組んだジェノバの船隊が、今にも霞の向こうからゆっくりと現れそうであった。
(p46-47)
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ボスフォラス海峡の来たの終点、アナドルカヴァウの高台にあるヒサール(要塞)から黒海の入り口を見下ろす。
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