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イスラムの風習だろうが、一緒に食事をしたのは、エミン君とバーバ(お父さん)だけだ。たまにお母さんが料理を運んできてくれるついでに一言二言話していくが、エミン君の奥さんなどは全く姿を見せない。バーバは相変わらず怖そうな顔をしている。後ろにかけてある立派なカーペットの絵を指して「どこですか」と聞いたら、声を荒げて、「メッカだ!」と言われてしまった(後でわかったが、接尾語の「だ」は日本語の「です」の意味だった)。しかし彼がけっして怒っているのではないことはすぐにわかった。それどころか、ずいぶん気を使ってくれている。ことあるごとに、お母さんやエミン君に細かい指示を出しているのだ。それは、わかるのだが、彼らとしても、僕のようなどこの馬の骨かわからない者が突如として現れ、一緒に飯を食っているのだから、どう対応していいか戸惑っていることも確かだろう。 (p163)
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夕食の食卓を前にしたバーバ(オズデミルさん)と息子のエミン君。温かさのこもった料理はどれも非常においしかった。
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