「子供に伝えたい登山の魅力」  杉山康成  (随筆通信 月17より)
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子供に伝えたい登山の魅カ
杉山康成

 ゴールデンウイークに2泊3日で家族で清里に出かけた。清里といえばのんびりとリゾートのイメージだが、そこは我が家らしく、2日目に八ヶ岳に登った。自駒池から高見石に登り、中山を経てニューに周り、また白駒池に下りる、夏場ならハイキング程度のコースだが、この時期は全行程雪道で、小学生の娘2人を連れての山行はそれなりの注意がいる。1時間半ほどで最初のビューポイントである高見石に着いたが、猛烈な寒風が吹き荒れ、ガスで展望もほとんど得られない。この時点ですでにかなり時間をロスしており、先行きを案じた家族はすぐに引き返そうと主張したが、僕は先に進むことにこだわった。

 我が家の登山暦は、下の娘が2歳4ヶ月の夏、立山に登ったときに始まる。少し歩くとすぐに、「抱っこ!」という子供をなだめすかして、何とか頂上までたどり着いたが、途中で大雨になり、テントまで帰れず小屋に泊まる羽目になった。次の年、子供達は北アルプスの燕岳を9時間かけて自力で登りきった。まだ、疲れたという言葉を知らない時期で、とにかく夢中で登る姿は感動的ですらあった。その後、北アルプスや八ヶ岳など、毎年のように登ってきたが、子供の成長とともに、「疲れた」という言葉が目立つようになり、景近ではなかなか黙って付いてきてくれなくなった。

 階段を数段登っただけで息が切れるほどの重い荷物を背負って、1日10時間以上も歩き続けると聞くと、山に行ったことのない人は顔をしかめるだろう。しかし、薄い酸素を少しでも多く取り込もうとあえぐうちに、自然の生気を吸収し、全身がリフレッシュしていく。その爽快感は何ものにも代えがたい。重い荷物も、急な坂も、少しでも多く体内に自然を取り込むための手段なのだ。そして、息を切らして汗だくになりながら、持続可能なぎりぎりのぺースで一歩一歩進むうちに、疲労とは別に全身にみなぎる力を感じることがある。自分の中で眠っていたパワーが目覚める時だ。

 今回の登山でも、子供達のぺースは後半に行くに従って上がった。次第に体が活性化していったのである。もし高見石で引き返していたら、そうした山モードに入ることなく終わってしまっただろう。白駒池に戻ってきたときの子供達の顔にはそれなりの晴れやかさがあった。しかし、「山はバスケットボールよりきつい」という彼らの言葉は、自分たちのなかに潜むパワーに、彼らがまだ気づいていないことを示している。自然と同化し、自然を全身で味わう喜びを覚えるには、まだしばらく一緒に汗をかく必要がありそうである。

(東京都会社社長)

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随筆通信 月 2004年5月号/通巻17号


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