こいしかわだより
小さな公園
池部淳子
東京の今年の暑さは凄まじいものです。日中35度になります。冷房の効いた所から外へ出て行くのがためらわれます。人々は建物の中に籠って暮らし、働いて、クーラーの熱気を排出し続けているのですから、厖大なビル群の東京は否応なく暑くなるというものです。やがて来る涼しい秋を待ちながら、今は猛烈な残暑に耐えています。
側の小公園の樹木も暑さにじっと耐えているのでしょうか。風に吹きよせられた病葉が毎朝門の足下に重なっています。
樹木といえば歩いて5分くらいのところに小石川植物園があります。この小石川植物園を囲む一辺に沿って坂道があります。植物園のコンクリート塀に沿った坂道ですが、塀を凌いで高々と伸び、茂っている樹木をながめながら、坂を行き来するのが私は好きです。
そこに近づくと空気が澄んでいるのか、涼しく感じられるのです。椿の季節には大木の藪椿が見事に端正な赤い花を咲かせます。白椿の大木もあります。この花が咲きそろったときは見惚れてしまいます。自い花の姿は今も目に焼き付いています。そして夏は"蝉しぐれ"。この坂道にはこの言葉がよく似合う。
小石川植物園は東京大学大学院研究所の附属植物園ですから、ある程度管理されていて、来園者にも気遣いがなされているようです。広大な敷地の中で美しい形と清潔な環境を維持していくのは大変なことと思います。
私の住所のそばの公園は極々小さく250平方メートル位でしょうか。樹が六、七本、ブランコが一つ、ベンチが一つという小さいものです。でも、この公園は美しくないのです。
夏落葉が散乱していて、これは風まかせ。風が運び去っていくと同時に、風が運んできたゴミも片寄ります。ビニール袋や空き缶など、いつのまにかふえるのです。時折、唯一のベンチがホームレスのお宿になったりもするのです。
でも奮起して一人で公園を清潔にし続けるには手に余ります。公園を美しくしたり、清潔にするにはたとえ極小の公園でも明確な管理システムが必要です。そして現実に美しく維持されなければ、公園で安らぐことはできません。
ここが美しい公園であったならば、この一角はどんなにかすばらしい場所になるだろうと、小さな公園を見る度に思うのは残念なことです。
(『月』発行人)
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