「四コマ・マンガ」  蒲 幾美  (随筆通信 月33より)
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四コマ・マンガ
蒲 幾美

 ミモザの樹の下のベンチに酒落しゃれた元気な老夫人が二人。携帯電話を持っている。お互いまだ使いこなせないらしい。相手の電話番号を打ち、信号音が鳴ると「通じた」と嬉び合っている。外国の風景でなく我が国日本の小公園でのスナップ。

 街をケイタイが歩いている。老若男女喋りながら。今日の朝刊の図書広告欄に「小中学生に携帯電話は必要か」とのっていた。

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 待ち合わせ時間より二十分早目に着いた約束の場所。混み合う待合室の前で探しても見当らぬ。そうだ携帯があると気付く。すぐ返信。五メートルと離れていない人込みの中から「オーイ」と手を振っている。せっかちの老夫妻は二時間前に来て、世の中の忙しい人種を眺めていたのだという。そして両方とも「ケイタイって便利ねエ!」と笑い合っていた。せっかちなのか、のんびりなのか。

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 荷物を送ったが昼頃には着くはずなのに携帯を卓上に置いて待っていても連絡が無い。変だな、病院へでも行ったのかしら…などと心配していると「携帯が昼から話し中で通じないそうですよ」と別の電話を渡された。そんなはずはない、どことも語はしていないと納得がゆかぬ。電話の故障かと家人に見て貰うと「どこも異常なし、操作ミスだろう。老化防止にメールやってみたら」と。

 メールのやりとりは始めてみたが、どうも不安で「今メール送ったけど着いた?」と馬鹿げた電話をかける。向こうからのメールも、まだ耳は達者なのだが、こちらが仕事に集中していると少々の音響ではあたまに響かない。

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 いつもかずの電話と言われている文化関係の自由業の女史。何度電話してもツーツーの話し中、電話の故障かとあきらめる。殆んど仕事関係の話らしいが、中には二時間喋った人も居たという。よくもまあ聞き役辛抱したと驚く。この女史には絶対に携帯は持たないでと忠告する。電波に縛られて心身休まる暇もない危険が目に見えているから。

 あなたの携帯の番号はと聞かれてもすぐ出て来ない。熟語にして覚え易くしているのに翻訳に手間どってパッと出ない。「七十五歳以上の元気な高齢者を新老人、七十五歳未満はジュニア会員」との日野原重明先生の提唱だが、新老人にもいろいろある。文科系、理科系、体育系など、それぞれ持って生れた遺伝子から来ているのかしら。いや私の恩師から聞いたのだが、遺伝や血脈などでなくどの道も努力を続けた者のみに成果があるのだと。

 昔、文盲という言葉があった。いま私は理科学全盲のうろうろ迷いの平成の新老人にすぎないが、ただ平和を希う心と生きる意欲だけは持ち続けたいと思う。 「女性専用車両」が話題になっている。女性の地位は向上し実力があれば政治・経済・その他すべてに活躍できる時代なのに通勤ラッシュの時間帯だけ女性専用という何ともつじつまの合わない話。

(川崎市 郷土史研究家)

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随筆通信 月 2005年9月号/通巻33号


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