「続・四コマ・マンガ」  蒲 幾美  (随筆通信 月34より)
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続・四コマ・マンガ
蒲 幾美

 リュックを背負いステッキを抱えて門扉を出て十歩ばかり歩いた時、携帯電話が鳴り出した。ポケットの無い服は都合が悪い。携帯を首からさげても重さが気になり、両手はステッキ以外持たないので、余分な物は背負っている。家の塀に寄りリュックをおろして携帯を取り出すと「慌てないで」と声が掛かった。振り向くと倅がいた。私のしぐさを見ていたらしい。携帯を開けると自宅の番号。何だ、年寄り扱いをして!掛けた本人が後に立っていた。

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 「おばあちゃん今日出られる?」と、携帯から待ち合せ時間の確認。「代々木上原のホームで待っててね、探すから」よろしく頼みますと、電話を切ろうとすると「ちょっと待って、おふくろ電話を切るのが早すぎるんだよナ、ひとこと一言おうと思ってもせっかちですぐ切ってしまう。必ず相手が切ってから切るようにしないと」と注意される。自分から掛けた電話はつい余分のことまでしゃべっているのに、向こうからの電話という意識が長電話は失礼と、変な気の回しようでせっかちの早切りと言われるようになった。そういえば早切りは相手にかえって失礼と不快感を与えていたかと反省する。

 ありがとう、ではさようならと、見えぬ相手にゆっくりと頭を下げてから向こうで切ったかを確かめることにしているのだが…。

      ○

 友人が手の平にすっぽり入るカメラ付きの携帯を買った。画面には新老人本人の明るい顔が写っている。用ができて友人に電話した。モシモシと呼んでも返事がない。賑やかな女性二、三人の声。「あらカバさんて誰なの」「河馬さんとお友達?」と、カラカラ笑い声。こちらの声は通じないが向こうの楽しいやりとりが聞える。外出中だナ、と改めて夜掛けたが、携帯は相変らず通じなくて自宅の番号で出てきた。友達三人と渋谷にいて街の騒音で聞きとれなかったという。お互いにあまり役立たない携帯をおもちゃの感覚で楽しんでいる。

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 印刷された葉書が来た。滞納金を納めないと法的手段に出る。差し押さえも云々と。全く身に覚えのないこと。ワン切りということを知らず掛け直したことは一回あるが、脅迫かオレオレか。家人に見せると「何回か葉書が来ていたがいらぬ心配をするから見せなかった。放っておけばいい」と言う。

 コンピュータには膨大な知識と社会・文化・科学ほかあらゆる情報が集まってくる。同時に恐ろしい人問の悪意がしのぴ寄り犯罪は殺人まで誘発する。携帯電話はパソコン関連のもっとも手軽な持ち物である。もうおもちゃ感覚などと呆けた気持ではいられない。世はまさに電波戦争、心眼を開いてしっかりと見極めなければならない。心を入れかえたらメールが送れるようになった。

(川崎市 郷土史研究家)

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随筆通信 月 2005年10月号/通巻34号


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