「マネーゲーム」  杉山康成  (随筆通信 月38より)
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マネーゲーム
杉山康成

 昨年は久々に株式市場が活況を呈した。そんな矢先、年明け早々、ライブドア事件が発覚すると、マスコミからはそのマネーゲームに対する非難が相次いだ。しかし、その論調には、素人相手の幼稚なあざとさを感じざるを得なかった。今や、マネーゲームという毒を飲まなければ市場は生きていけないというのは、社会の常識ではなかったのか。

 株はもともと企業が事業に必要な資金を獲得するための手段である。会社は株を発行することによって、投資家から資金を得る。投資家は見返りとして、投資額相当の経営権を獲得し、同時に会社が稼いだ利益の一部を配当として受け取ることができる。会社の業績が良ければ、株の価値は上がり、配当も増える。従って、より高い価格でもその株を手に入れたいという人が現れる。そのニーズに応えるため、株式を自由に売買できる株式市場が創られ、同時に株価の決定が市場に委ねられることになった。

 一方、企業は新株を発行する際、この市場価格を元に売り出すことができ、業績が良く、株価の高い会社は、有利に資金調達ができるようになったのである。

 ところが、株式市場が一旦形成されると、そこで株を売買する人々の関心は、会社の経営権や配当から、株をいかに安く買って高く売るかということに移った。その点では、大掛かりに株式を運用して利回りを稼ぎ出す生命保険会社も、パソコンの前に張り付き、ネット売買に没頭する個人投資家も同じである。いずれも、いかに早く株価の変化を予測し、対応するかで勝負が決まるのである。

 株価は買いたい人が多ければ上がるし、売りたい人が多ければ下がる。一見、単純に思われるが、多くの思惑が絡む市場は非常に暖昧で複雑な動きをし、株価の変動を正確に予測する方法は未だに存在しない。現在、株式の運用枝術で最先端を走っているのは、ヘッジファンドと呼ばれる資産運用会社であろう。彼らは、先物取引などの金融派生商品を巧みに組み合わせ、金融工学の複雑な理論を駆使し、株価が値上がりしても値下がりしても利益が出せる運用方法を開発している。まさに現代の錬金術である。

 高度化したマネーゲームは、巨額の資金を動かすようになり、東京証券市場では、毎日、何兆円もの取引が行われる。その結果、企業業績ではなく、マネーゲーム自体が株価に大きな影響を与えるようになる。さらにはその株価が企業業績自体に影響を与えるという逆転現象も起こってくる。マネーゲームに翻弄されて経営がおかしくなってしまう企業も出てくるのである。それでも株式市場は必要だというのが社会の認識である。世界規模のマネーゲームが、今後、ますます熾烈を極めることは避けられそうもない。

 あるとき、再現部をどう弾くかが問題になった。この曲では、提示部においてしばしばモーツァルトが見せる、第1主題から第2主題にかけてのめまぐるしい転調は鳴りを潜め、調の移行は単純で、非常におおらかである。逆に、再現部において、主題間の転調がないにもかかわらず、なんともいえない微妙な心理的な効果を生み出していて、ソナタ形式の可能性を追求するモーツアルトの挑戦が見えてくるのである。

 E-mail:ebiman@kb3.so-net.ne.jp HP:http://ebiman.fc2web.com/

(東京都 会社社長・理学博士)

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随筆通信 月 2006年2月号/通巻38号

Copyright © 2006 杉山康成/SUGIYAMA Yasunari, All rights reserved.

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