「舗装」  池部淳子  (随筆通信 月45より)
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いわきファイルF
舗装
池部淳子

 いわき地方は旧盆の前後10日ほどが暑さのピークで、ぐったりしてしまうような暑さになる。だが、それを過ぎると朝晩はっきりと涼しさを感じるようになる。今年も9月10日頃には、朝晩秋を感じた。

 東京から移って2月からいわきに住み始めたが、夏を過ごして気づいたことがある。それは、地球温暖化がいわきにも影響していそうだということである。

 夏の気温が上がっている。日中は暑くとも朝と晩は気温が下がって眠り易い地方であったが、家が建て込んだせいもあってか、夜も気温が思ったほど下がらない。

 今年は梅雨が長く、いわきの夏は短かったが、夏の避暑地に最適と思っていたいわきもやがて大分変るかもしれない。

 もう一つ驚いたことがある。自動車の数の増えていること。路線バスの運行がなくなっている。歩いている人がほとんどいない。歩いている人はどんな人かと注目されるほどである。その代り自動車は一家に1台に止どまらず、一家に2台、3台という状況である。

 道路を走行している自動車が多く、細い路地からも車が次々と出て来る。交叉点を渡る人は一人もいないが、信号待ちの車はつながっている。こうした状況で、自動車は生活必需品である。私は運転免許を持たないので、可能な限り歩いて用事を果たすようにしているが、どことなく肩身が狭い感じであった。でも、人はこれほど歩かないで良いものなのだろうかと、考えてしまう。私は今では歩く方が自然だと考えて正々堂々と歩くことにしている。

 さて、私は時々歩いて30分ほどのところで大駐車場のあるスーパーマーケットに買物に行く。帰りは買ったものをリュックで背負い、散歩のつもりでてくてく歩く。

 ある日、夕方6時過ぎに買物にでかけ、あれこれ見ているうちに時間が経って、帰りは8時を過ぎてスーパーを出た。暑い日であったが、夜も8時を過ぎている、外は涼しくなっているだろうと思って歩き始めたが、車道に添った幅1メートルくらいの歩道を歩きながら、あまりに暑いのに驚いた。この暑さは都会並みだ。

 涼しいはずの地方で、なぜこんなに暑いのだろうと考えた。そして気がついたのが「舗装」である。

 スーパーマーケットの大駐車場の舗装、道路の舗装、道路の左右にある建物周辺の舗装、視界には日本製紙とクレハの二つの大工場が見える。工場内は全て舗装。つまり土を覆っているのだ。夜間、放射冷却現象を起こす土を覆ってしまう。それでこんなに暑いのだと気がついた。これは夜も酷暑の東京と同じになる走りではないか。いずれいわきも酷暑の夜々をすごすことになるのか。

 道路の左右に並木を準備したり、大駐車場に木を植えて影を作ったり、水路を造ったり、地表を覆ってしまったことへの対応をしないと、やがてはクーラー無しでは過ごせなくなり、そのクーラーの排気熱でさらに暑い夜になる。そんな過ごしにくい未来が見えるのはとても悲しい。

(『月』発行人)

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随筆通信 月 2006年9月号/通巻45号

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