「贈り物」  蒲 幾美  (随筆通信 月47より)
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贈り物
蒲 幾美

 一年も終りに近づくと歳暮用品の美しいパンフレットがデパートや地方の物産店などから届き、改めて年の速さに驚く。

 そうした中で嬉しいのは、故里からの土の香の根深の菰包みや山牛努ごぼう、里芋、小粒の馬鈴薯は皮ごと油と醤油で煮つけるころ、、ころ煮用など。それに荏胡麻など添えて送ってくれた縁者も減り、今は孫の代に変わりつつある。

 むかしは副食は野菜、自家製の味噌たまり。川魚や秋になればいなごとり、富山からの塩びきの鮭、牛肉などはときたまの奢りのご馳走だった。当時は農村や田舎町に肥満の人は殆ど見かけなかったが、グルメの現代では年令を問わず内臓脂肪を減らすことに苦労している者も多い。

 病気見舞いといえば貴重だった鶏卵や白砂糖(和三盆)など。現代の予防医学と違って「日赤の院長さまが往診にござったで、重病らしい」と噂が流れた。

 「家」を中心にした冠婚葬祭の古いしきたりの賜り物や引出物、お返しなどの中で生きてきた時代から、結婚は本人同士の自由意志になった。幸せになる者。世間を知らない若さからの無謀な出発は悲惨な結果になったり、あるいは無駄な費用をはぶいて借り衣装で、新郎新婦門出の「写真はがき」で結婚を報告する合理的な出発組。みんなに祝福されて新婚旅行に海外へ出発したが、帰りは「成田離婚」の声も聞く。

 こうした時代の変遷をどうとらえていいのかわからなくなった。

 物のやりとりのない付合いや、贈ったり贈られたりなど、各人の社会とのつながりや暮らしによって違ってくる。

 初めて訪問した宅へ、手みやげに季節の枇杷を果物でも一目で見事な特級品と知ったとき複雑な思いに落ち込んだことがあり、それからは初対面には失礼を詫び手ぶらで出かけることにした。

 対話の中でこちらの心を伝え、相手の人柄や趣味、衣食の好みなどもわかってくる。贈り物はそれからということにして。

 三十余年前、離郷してまもなく類焼で身一つになり、焼けあとの整理や雑事に追われ買物にも行けなかった時、知人が仮住居を探し尋ね来て、見舞の品を届けてくれた。

 日用品の洗面具や下着類、こまごまと新しい品の中に髪を包むスカーフがあり、そのこころくばりが見にしみた。知人は過去に罹災していて、その時先ず必要なものを揃えてくれたのである。

 「お歳暮は何がいい…」と言い合う仲での贈り物は楽しい。物のやりとりは金品の多少でなく心のやりとりと思う。

(川崎市 郷土史研究家)

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随筆通信 月 2006年11月号/通巻47号

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