「中国バブルレポート」 杉山康成  (随筆通信 月58より)
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中国バブルレポート
杉山康成

 中国の株式が値上がりを続けている。上海A株は、この2年間に5倍、今年に入ってからも2倍になった。誰がどう見てもバブルである。これに対して、アメリカのグリーンスパン元FRB議長なども、機会あるごとにバブル崩壊への懸念を表明しているが、株式投資熱は一向に冷める気配がない。

 中国においては、ここ数年の貿易黒字の急激な増加により外貨準備高が膨れ上がり、それとともに国内のマネーサプライが急増した。政府はそれを抑えるために、再三にわたり金利と銀行の預金準備率を引き上げたが、それでも市場の資金は吸収しきれず、極端な金余りの状態となった。そうした資金は、まず国内の不動産に向けられ、この3−4年ほどでマンション価格が高騰した。しかし、北京や上海の中心部に次々と建てられる高層マンションの価格は、すでに二戸当たり日本円で5000万円を越える水準に達している。警戒感が高まった結果、新たな投資先を求めた資金が株式市場に流入し、現在の株価の高騰を招いているのである。

 中国のGDPはすでに世界5位であり、日本の半分程度に達している。人口が日本の10倍もいるのだから、まだまだ貧しいのではないか、と考えるのは間違いである。国内の大半の富は、人口の1割程度の富裕層と呼ばれる人々に集中している。しかも彼らは、常に安い労働力の恩恵を受けられる。飲食店の店員の給与が安ければ、食事代も安くなる道理である。最近の中国の富裕層の人たちの暮らしぶりは、すでに日本人より豊かだというのが実感だ。ただし、それは残りの12億もの貧しい人たちが、安い賃金で働いていて、彼らを支えているからである。彼らが株式に投資する資金も、それによって発生したバブルも、急速な成長とともに拡大した極端な貧富の差によってもたらされたものなのである。

 現在、中国の若者は、一つの会社に定着することなく、より高い給与を求めて転職を重ねている。しかし、田舎から都市部へは、常に新たな安い労働力が供給されるので、思うように給与は上がらない。しかし、都市での豊かな生活を目の当たりにして、自分も豊かになりたいと思わない者はない。今後、中国の平均賃金は間違いなく上昇するだろう。それとともに、これまで富裕層が享受してきた安い労働力の恩恵は失われていく。それを最もよく知っているのは、実は富裕層の人たち自身だろう。激動の歴史を持つ中国で、自分達にだけ良い時代がいつまでも続くと考えるほど、彼らは楽観的ではない。だからこそ、今のうちに自らの資産を出来るだけ増やしておくために、投資に力を入れているのである。

 中国バブルは崩壊するのか?中国経済の特殊な事情を考えると予測は困難だ。そもそも、これまでのあまりに急激な発展自体が、歴史に類を見ない異常な出来事なのだ。豊かさを求める13億人のエネルギーは、さまざまな犠牲や矛盾を次々と飲み込み、ひたすら膨張し続ける。そのダイナミズムは、従来の世界の常識を越えている。現在のバブルも、その巨大なうねりの中で、出来ては消える泡の一つに過ぎないのかも知れないのである。

(東京都 会社社長・理学博士)
E-mail:ebiman@kb3.so-net.ne.jp HP:http://ebiman.fc2web.com/

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随筆通信 月 2007年10月号/通巻58号

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