虫 池部淳子  (随筆通信 月70より)
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池部淳子

今日は秋彼岸。朝はさわやかに晴れて明けた。

降りそうな降らないような曇った空で湿気の多い日がずっと続き、暑さが残っている完二であったが、久しぶりに秋晴という言葉が似合う朝である。いわきでは「暑さ寒さも彼岸までの言葉通り」と、よくきいたが、今日はそれを実感させる見事な快晴である。

さらりとした空気でほっとするのには訳がある。いわきに移り住んで、自然を身近に、その美に接することができるのは何より嬉しいが、思わぬこともある。

7月下旬私は蜂に左腕を刺された。庭の木の枝を払ってもらったので後始末をしていたら、ちょっとと思って腕まくりをしていた腕に蜂がとまった。知らずに何となく腕をさすったとたんチクーリ。驚いて勢い良く払ったら蜂がポトリ。 

すかざず野菜作りをしている友人に電話。蜂にさされた経験を問うと、あるという。早速教えてもらった薬4点を全部買い込んで、あせっているので、今後のこともあると、腰に下げる虫除け線香まで買ってしまった。 

でも、結局腕はどんどん腫れ、赤くなってゆくばかり。翌日総合病院まででかけて薬を塗ってもらい、30分の点滴をすることになった。半月すぎて腕はほぼもとに戻った。

蜂はもう一度騒動を起した。我家の前、道路を挟んだ斜め向うに太めで長い電柱が立っている。その電柱の二ヶ所に小さい穴があいていて、そこに蜂が巣を作ったらしい。朝、ゴミ置き場にゴミを出しに行ったら、何と電柱に黒いペンキでも塗ったように蜂がびっしり。通学路でもある。役所がはじまる9時ぴったりに、助けてと電話をした。

結局午後2時ごろ蜂防具を着用した担当の人がきて、穴をふさいでくれた。その晩雨が降ったこともあり、次の日の夕方には蜂は消え失せた。

庭の手入れは怠りっぱなし。洗濯物を干しに出てゆくのも逃げ腰。今では私は少なからず蜂恐怖症である。  

都会では空気中の虫に気をつけるなどということはない。虫にとって厳しい環境というか、虫を寄せつけない環境というか、都会では真夏はノースリーブのファッションである。  

だが、ここは虫に用心なのだ。畑で働く人は出ているのは目だけかと思えるほど完全防備。都会の延長で衣服を考えていた私を蚊などの無視が追いかけてくるありさま。夕方散歩帰りに近所の人と出会い一言二言立話をしたとたん、袖から出ている手の甲に蚊が集中。四、五箇所刺された。  

散歩の時に野球帽を被ってでかけたら、帽子の庇の中に小虫が飛び込んできて頬を刺された。虫を甘く見てはいけないことを知った。今になって買った薬が役にたっている。  

だが、夜になって虫の声を聞くとしみじみ秋だと思う。刺されたことが遠い過去のできごとのよう。  

 (『月』発行人)

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随筆通信 月 2008年 10月号/通巻70号

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