改良無限 池部淳子  (随筆通信 月73より)
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改良無限
池部淳子

新年おめでとうございます。

お読みいただいております皆々様のご健勝とご多幸を祈念申し上げます。

さて、昨年末近く、思いがけない情報がもたらされた。水戸の印刷会社の女性専務から電話で「外之内さんが百歳になられたお祝いに、以前作った彼の自叙伝を再版したいということです」とのことであった。

ああ、彼は百歳で健在なのだと、思いがけない知らせに驚いたり嬉しかったりだった。

鍛えられてがっしりとした体格に、強固な意志と明解な頭脳を感じさせる風貌。いかにも責任を持った判断をしそうな印象で、人に忘れさせないものをもった人物であった。

彼は明治41 年茨城県美野里町生まれ。酪農の専門家である。美野里酪農協を創設、初代組合長になった。また、昭和54 年から平成2年までの12 年間、美野里町町長であった。

自叙伝を出そうとしていた当時、彼は92 歳。美野里町食品公社の会長をしていた。資料も日記もないが自叙伝を出したいと印刷所に申し出たそうである。

習い始めたワープロで92 歳の彼が打った入力ミスだらけの原稿を印刷所の依頼で整理し、自叙伝のデザインをしたのが私である。入力ミスの多い原稿ではあったが、見栄のない誠実で端的な表現は、彼の人生の経過と考え方が良くわかるものだった。平成11 年12 月、外之内光男自叙伝『道を拓く』が出来上がった。

ところが彼はさらに原稿を書き続け、平成13 年9月『続・道を拓く』を上梓した。彼の年齢からは思いも及ばない、実行力と集中力は見事であった。

本を作る仕事をしていると、著者の文章の中で出会う言葉に感動することがあり、心に響いた言葉が、その後の人生に影響を与えることがある。

私は二冊の外之内光男自叙伝の中から、生涯忘れないだろう一言をもらっている。

それは彼の文中にあった一言、「改良は無限である」。

この考えを基本に彼が町政を行っていたのを知って、とても感動した。

私はそれ以来、自分のためにこの言葉を使わせてもらっている。「失敗したら改良無限」、「できなかったら改良無限」、「自己がいたらなかったら改良無限」、「人生、改良無限」と。いまではこの四文字は私のおまじないのようになっている。外之内光男氏からいただいた生涯のプレゼントである。だから彼がまだ百歳で健在なのが本当にうれしい。

私は今年もまた、「改良無限」を心中につぶやきながら、自分を励ましつつ進んでいくことになるだろう。  

 (『月』発行人)

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随筆通信 月 2009年 1月号/通巻73号

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