薔薇の道 池部淳子  (随筆通信 月78より)
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薔薇の道
池部淳子

六月二日から七日までの六日間、月俳句会はJR水戸駅から徒歩六、七分の茨城県立図書館のギャラリーで『俳句モダン掛軸展覧会』を開いた。会員のほとんどが各自毛筆で俳句を書いた色紙を彩りゆたかな掛軸に仕上げて五〇本を展示したものである。

期間中、ご覧下さった方々には心から御礼申し上げます。華やかな色彩の掛軸であったこともあって、図書について来館の方々にも見ていただけたのは嬉しかった。

展覧会の期間中は梅雨前だったので、雨は半日のごくわずか、ほとんどさし障りなく過ぎた。

会場となった茨城県立図書館は旧県庁の敷地内にあるのだが、この旧県庁の敷地がまるで公園のように広大で、しかも美しく整えられているのには驚かされた。

旧県庁は水戸城址の一角に建てられたと聞いた。現在、水戸城の面影は石垣を僅かに残すばかりだが、県立図書館のすぐそばに三の丸小学校というのがあったので、そこがお城の三の丸なら、二の丸、本丸と推測して、水戸城のかつての広さが想像される。

水戸藩には概して派手さは見られない。見た目には質素で、実質を重んじる風情である。だが、人間を尊重し、環境が人品を形成することを十分に考慮している意識の高さがひしひしと感じられる。

この旧県庁の敷地の空間の取り方がすばらしい。見上げるほどの見事な大樹に囲まれた広大な敷地に、レンガ造りの旧県庁舎と県立図書館になった元議会の庁舎があるだけ。それと駐車場。広々とした芝生の土地の空間、建物間の離れた空間、木製の椅子が木陰や芝生の傍らなど、そこここにちらほら。急いで歩くのは勿体無いと思いながら歩いていると、自然に胸がひろがり、深呼吸がしたくなるほどの大らかさで、ゆとりを持った美しい場所である。

また、図書館では県議会の会議場がそのまま閲覧室になっていて、議員たちの大型の椅子に市民が腰掛けて本を読んでいる。何とも大らかな処置に感心してしまった。

また、薔薇が建物へ自ずと誘うように植えられていて、真紅や黄色やピンクの花が香りを放っている。薔薇も手入れが行き届いている。

展覧会の初日、この薔薇の道を歩いて図書館に入った。華やかな薔薇の花を両側にしながら歩いて行くと、展覧会も盛況になるような予感がして心が弾んだ。薔薇は茨城県の県花だと教えられた。

水戸には梅の木三千本という『偕楽園』もある。『見せる美』と『実用』をバランスよく実現している。しかも清く美しく管理されている。水戸藩三十五万石の誇りと文化の伝統が息づいているのだろうか。

 (『月』発行人)

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随筆通信 月 2009年 6月号/通巻78号

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