心にのこる人々 M種倉すず  蒲 幾美  (随筆通信 月91より)
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心にのこる人々 M種倉すず   

「おくりびと」が世界の映画として注目を浴びることになった。私共は死の世界というものを考えないように、向こうへ押しやって、不吉なこととして逃げていた。「おくりびと」がマスコミで毎日報道され改めて見直すようになった。

でも卒寿ともなると、生を終える日まで、あと何日か何ヶ月か、或いは一年か、など自分のこととして考えるようになる。卒寿まで生き残った同窓生が、誰も欠けずに、生きているよろこびを味わってもらいたいと希う。

数年前種倉すずさんという同級の友人が、「同級のみんな一人一人が、きみちゃんも、三千代ちゃんも光郎君も喜右ェ門君も、生きているしあわせを感謝して一日一日を生き抜くよう、合掌している」と言っていた。そのすずさんの希っていた友人たちも、みんな仏界へ旅立った。

遥かな青い空と白い雲を仰ぎながら、このごろすずさんの言葉の真実がひびいてくる。

半世紀余もむかしのこと、当時も「おくりびと」の仕事をしていた人々がいた。葬儀を職業としている人々や、火葬場で働く人たち。

むかしはこの職業を「おんぼ焼き」といって、別の人種のように近寄らず、一種のいじめのような空気があった。しかし、町役場から嘱託の立派な公務員なのである。

私は新聞の仕事で官庁廻りをしているとき、取材で小使室へ行き、寒い日だったので役場の小使室の囲炉裏に当りに行った。その時「毎日御苦労さま」と、記憶にはないが、言葉をかけたらしい。四十歳代の彼は私の言葉に感動したらしく、何かにつけて親切に心のこもるつき合いをしてくれた。

先日昔を語れるたった一人のいとこの妙子が言った。「死んだら何も残らないんだろうな」と。「どうしてそんな事言うの? 人間夢を見るのだから物体は消えても心とか、気というものはあると思うよ。他の動物にはない、人間にしかないことだと思うけど」と言った。

妙子は若い頃交通事故を起した。新婚の頃、夫が入院し、看護に通い、心身共に疲れていたという。目が覚めたら車の中にいた。車は仰向けになり、窓の外では親戚や友人たち、警官がドンドン何か叫びながらドアをたたいていたという。

そんな体験上、意識がなくなればそれでおしまいと思うという。

そうだったのか、そんな体験があったのか。しかし、親は子を殺し、子は親を殺すなど、殺伐とした現在だが、まてよ、動物にも親子の情や一族の団結行動など、人間よりも情愛の濃いことも事実なのだとつくづく思う。一族郎党みんなしあわせに元気で、とひたすら希っている。

 (川崎市 郷土史研究家)

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随筆通信 月 2010年 7月号/通巻91号

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