心にのこる人々 Nプロゴルファー O元気なオバチャン  蒲 幾美  (随筆通信 月92より)
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心にのこる人々 Nプロゴルファー   

「捨てっちゃえ! 捨てっちゃえ!」と中老の息子が言う。人間九十余年もやっていると勿体なくてなかなか捨てられぬ。

この勿体ないは、人それぞれの想い出につながっている。どうしても捨てられず、知人は納める倉庫を作ったという。

また友人で、一日外出した留守にメリンスの着蒲団をゴミの収集場へ持ち出されて、あわてて収集車の来ないうちにと走ってやっと取り戻すことができたという。

私も同じようなことがあった。新しい下着なのにビニールの袋に詰め込んでいる。まだ着られるのに、とそっと家を出て取り戻した。ところがどんなに新品でも、家族の誰の体にも合いそうにない。成程、捨てる理由があるのだと納得した。

中老の息子が原色蒲色のダブダブの半纏を着ている。マァナントハデナ色彩と驚いた。「これはゴルフのブルゾンだが、わしゃもうゴルフをしないから武君にやるよ」という。息子の長女の夫は仲間とサッカーチームを作っているスポーツマンだ。「このブルゾンはなァ、プロゴルファーの尾崎が世界選手権で金メダルをとったときの由緒あるブルゾンだから!」「わァ!ほんとにいただけるんですか」と、彼は半信半疑ながら喜んで叫んだ。うちの右隣の(川崎市麻生区王禅寺)ゴルファーの三冠王、村山龍氏とは親しく、おない年の同じ日生まれとわかってから「双子の兄弟みたいですなァ…」と。お互いが手料理の持ち寄りで誕生祝いを続けた。

歳月がたち村山氏は腰痛で業界から身をひき、引越された。

尾崎氏が身につけたブルゾンは私の息子の物になり、次は息子の長女の夫に移った。勿体ない、物を大切にの精神は金メダルの由来と共に、子や孫に受け継がれて行くのだろう。

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三泊四日の旅行をして帰宅、ほっと一息ついて何が一番印象に残ったか考えた。

50 代から60 代のオバチャン達の元気の良いのに驚いた。旅行者の殆んどが女性なのだ。男性は白髪まじりの衣類も昔のまま代り映えしないが、女性は益々明るく髪も茶髪や流行の部分染め、その色彩もカラフルである。

観光会社のバスが七、八台ホテルに着くと、修学旅行なみの賑やかさ。セルフサービスの夕・朝食ともなると肉類・さしみなど皿にてんこ盛り。「沢山おあがり下さーい」と、ホテルの案内嬢があふりたてる。我々は時間をずらして食堂へ。

中老女性がバイバイしながら去って行くと、入れ替って年寄りの団体。先ず旅の汗を温泉でゆっくり流す。アアーいい湯だねー。今度はバイキング。各自大皿を持って、ガニ股でがっちり体を支えたり、腰痛の年寄りは腰を曲げ、両膝を料理の並んだ台で支えて、お代り自由

大正ひとけた生まれの私は旅行といえばお伊勢さまや浄土真宗の本山。京まいりをするために祖父母や両親は働いていた。働いて小遣銭をため、孫たちに買う土産を楽しみに。

今どきの平成の孫たちはじじ・ばばの思いなどてんでわからないことだろう。

 (川崎市 郷土史研究家)

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随筆通信 月 2010年 8月号/通巻92号

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