路地を写真を撮りながら歩いていると、どんどん人が集まってきて、「ウェアーユーフロム」「ワッチャネーム」と声をかけて来る。それに僕が答えると、やけに喜ぶので不思議だったが、しばらくすると彼らがなぜそれほど喜んでいるのかがわかった。彼らは文法や単語の意味をわかって声を上げているのではない。誰かに教えてもらったのをオウムのように真似してそのまま発音しているだけなのだ。「ハロー」と同じように、一つの言葉なのである。だから、僕が答えると、適当なでたらめに僕が反応したことを面白がっているのだ。もっとも、そんな連中とは別に、父親から、仕事に使う英語を教えてもらっているまじめな子供もいた。
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