「未来への一樹」  池部淳子  (随筆通信 月36より)
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こいしかわだより
未来への一樹
池部淳子

 白山通りの白山と千石の間は銀杏並木です。銀杏の木はまだ五メートルあまりで、さほど大きいというほどではありませんが、きれいな円錐型をして通りの両側に整然と並んでいます。白山通りに沿った歩道の幅はかなり広く、四人が横に並べるくらいあるので、この銀杏並木の四季の移り変りをゆっくりと眺めながら歩くことができます。

 東京が温暖化しているせいでしょうか、銀杏は十二月中旬の今が黄葉のピーク、晴天の空に輝くような黄色を掲げて並んでいます。

 白山通りは小高い丘の裾に沿うように走っていますが、丘を越えるように走っている旧白山通りというのがあります。旧白山通りは道幅も幾分狭いので、交通量の増加もあってか白山通りをバイパスとして作ったのでしょう。道幅も歩道も大きな白山通りです。そして、この通りを作った時両側に銀杏並木を計画したのでしょう。銀杏の木は育って今予想通りの美しい並木になりました。樹間はまだ余裕がありますから年々育って大樹になることが想定されているようです。この計画は、未来にとってとても有効でした。

 一方、春日通りの小石川四丁目の交差点近くに自動車の販売会社ができました。『レクサス小石川』といいます。自動車について無知なので、詳しく紹介できないのがお恥ずかしい。

 ガラス張りの一階には高級車らしい車が飾られています。この素通しの一階フロアとその周囲は飾り付けもシンプルで塵ひとつない清潔感、美観、眺めるだけで気持ちがよくなります。

 この会社のまえは大幅の歩道です。この歩道の一角に高さ四メートルくらいの樹木が一本植えられました。突然現れた一本の木は『レクサス小石川』の目印ともなり、また何もなかった殺風景な道路脇に一本分の安らぎを創造しました。風にそよぎながら、木はこの地にしっかり根をおろそうと頑張っているように見えます。

 思えば、光合成によって酸素を合成し、人間の生命を守っているといえる樹木を人間自らが地球的規模で切り続けてきたわけです。そして今、もはや限界であることに人々が気付いてきたのかもしれません。破壊ばかり、失なうばかりの選択ではなく、未来のための創造を選択しなければならないことに……。

 私を妙に感動させた一本の樹でした。

(『月』発行人)

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随筆通信 月 2005年12月号/通巻36号


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