遺跡に立ってみると、かつての人々の生活の活気が伝わってくる。実際、彼らの生活のかなりの部分は現代にも共通するものではないか。貨幣がなかったとはいえ、アゴラは連日、物々交換で賑わい、町にはいろいろな道具を作る人、狩の獲物を売る人が溢れ、戦いで2輪馬車を駆り、敵を蹴散らして凱旋した兵士たちが酒盛りをする。整然とした町並みには、彼らが自分たちの築き上げた国家に対して持っていた誇りすら感じ取れるのである。一方では、羊を生贄にささげた石などを見ると、現代とはかけ離れた血なまぐささも伝わってくる。
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